コンピュータの根本は「電気を ON/OFF するスイッチ」。リレー(1940年代)からナノメートル級 FinFET(現在)まで、その進化が現代の半導体産業を作った。
スイッチの状態(ON/OFF)を「1」と「0」に対応させると 2進数で数を表現できる。スイッチを組み合わせると AND・OR・NOT などの論理演算が実現でき、それらを積み重ねると加算・乗算・比較などあらゆる計算が可能になる。
つまり「どれだけ速く ON/OFF できるか」「どれだけ小さくできるか」がコンピュータの性能を決める。スイッチの進化=コンピュータの進化。
仕組み:コイルに電流を流すと電磁石が生まれ、金属のアームを引き寄せて回路をつなぐ(ON)。電流を切るとバネで戻り回路が切れる(OFF)。
歴史:元は電信・電話交換機の技術。1944年完成の Harvard Mark I はリレー約 3,300 個を使用し、毎秒 3回の加算が可能だった。1947年に後継機の Harvard Mark II のリレーに蛾(が)が挟まって誤動作し、乗組員がそれをログに貼り付けたのが「バグ(bug)」という言葉の語源とも言われる。
仕組み:真空のガラス管にカソード(電子放出)・グリッド(制御電極)・アノード(電子受取)を封入。グリッドの電圧を変えることで電子の流れを制御する。
歴史:1946年稼働の ENIAC は真空管 18,000 本・重さ 30 トン・消費電力 150 kW。毎秒 5,000 回の加算でリレーの約 1,000 倍の速度を実現。ただし真空管は頻繁に切れるため、30人の「コンピューター(計算する人)」が交代で修理を担当した。
仕組み:N型・P型半導体(シリコン)を NPN の順に接合。中央の「ベース」に微小な電流を流すと、コレクタ〜エミッタ間に大きな電流が流れる(増幅 + スイッチング)。
歴史:1947年の発明で Shockley・Bardeen・Brattain は 1956年ノーベル物理学賞を受賞。真空管と比べて小型・省電力・長寿命・量産可能で価格が劇的に低下。1955年にはトランジスタラジオが商品化。コンピュータが研究室から産業へ飛び出すきっかけとなった。
MOSFET:Metal-Oxide-Semiconductor FET。ゲート絶縁膜(SiO₂)を介した電圧でチャネルを誘起しスイッチング。電流ではなく電圧で制御するため消費電力が極小。現在の全 CPU・メモリはこれがベース。
IC(集積回路):多数のトランジスタ・抵抗・コンデンサを 1枚のシリコン基板に集積。Jack Kilby(TI)と Robert Noyce(Fairchild)がほぼ同時に発明し、ともに「IC の父」と呼ばれる。
Intel 共同創業者 Gordon Moore の予言:「集積回路のトランジスタ数は約2年で2倍」。1965〜2010年代まで約 50 年間、驚くほど正確に的中し続けた。
Very Large Scale Integration — 数百万〜数十億個を1チップに。Intel 386(1985)が 27.5万個。マイクロプロセッサが家庭・企業に普及。
平面 MOSFET の微細化限界を突破するため、チャネルを「ひれ(Fin)」状に立体化してゲートが三方から囲む。リーク電流を大幅削減。Intel 22nm / TSMC 16nm で採用。
Gate All Around — ゲートがチャネルを四方から囲む。Samsung 3nm・TSMC N2(Apple M5 予定)で採用。Si 原子 10個分(0.23nm)に迫る微細さ。
* 人間の髪の毛:約 70,000 nm / コロナウイルス:約 100 nm / Si 原子 1個:約 0.23 nm
| スイッチ技術 | 動作速度 | サイズ | 消費電力 | 耐久性 | 代表的コンピュータ |
|---|---|---|---|---|---|
| ⚙️ リレー | 〜10² 回/秒 | 数 cm | 中 | 機械摩耗 | Harvard Mark I (1944) |
| 🔮 真空管 | 〜10⁵ 回/秒 | 数 cm | 非常に大 | 数百〜千時間 | ENIAC (1946) |
| 🔬 トランジスタ | 〜10⁸ Hz | mm → μm | 小 | 半永久 | IBM 7090 (1959) |
| 🧩 MOSFET/IC | 〜GHz | μm → nm | 極小 | 半永久 | Intel 4004 〜 現代 CPU |
| ⚡ FinFET/GAA | 3〜5 GHz | 3〜7 nm | 極小・省電力 | 半永久 | Apple M4 / AMD Zen5 |